ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』の感想です。
読了済みの方との意見交換のつもりで書いています。
結末に関するネタバレが含まれています。
未読の方は注意して下さい。
ベルヌ『海底二万マイル』を初めて読んだのは小学生の頃。
文字の大きい、挿絵が沢山入っている子供向けの抄訳版でした。
中学生になってからは福音館書店古典童話シリーズの全訳版に挑戦。
その解説で、『海底二万海里』『グラント船長の子供たち』『神秘の島』が三部作になっていて『神秘の島』でネモ船長の正体が明かされている、と知りました。
これは読まないといけないと思って早速、旺文社文庫に入っていた『グラント船長の子供たち』に挑戦。何とか読み終えていよいよ福音館古典童話シリーズ『神秘の島』を読み始めました。
ところが、その頃には既に重度のうつ病に侵されていて、本を読むことができない精神状態に陥っていたのです。
字を覚える前から本好きだった私でも、うつ状態になると本を読む気力がなくなるのです。
その後30年以上、マトモな本が読めずに軽い本でお茶を濁すような時代が続きました。
最近になってようやく本を読む気力も出てきました。
うつ状態になる前に一番好きだった作家ジュール・ヴェルヌ。
創元推理文庫の目録を見て
「ヴェルヌの作品がこれだけ出ている!いつか読んでやろう!」
と心躍らせたヴェルヌの作品。
そしてうつ状態のため冒頭少しだけ読んで投げ出してしまった『神秘の島』。
この作品を読むことは私にとって、自分が自分でなかった30余年からの復帰を意味するのです。
以下、結末に関するネタバレが含まれています。
未読の方は注意して下さい。
30年後にようやく読み終えた『神秘の島』。
あのネモ船長の正体は?ネモ船長の活躍を再び読めるのか!?
ああそれなのに、ネモ船長は老い、最期を迎えます。こんな風に描かれていたのか。あの人のその後。知りたくなかった。
私が『海底二万海里』を読んだ頃は、まだ若いというか幼い時代でした。
しかし私も30年を経て、老いを感じる年頃になってきました。何より両親が老いています。
若い頃に『海底二万里』を読んだ直後に『神秘の島』を読むと、ネモ船長のあまりの変化に驚くのではないでしょうか。まるでウラシマ効果です。しかし若い頃には老いを実感できないのではないでしょうか。
ネモ船長の最後は、老いを感じる年頃に読んでこそ余計に心に響くと思います。
しかしヴェルヌが『神秘の島』を出版したのは46歳の時。その年齢で老いて死にゆくネモ船長を描いたわけです。
私としてはネモ船長が颯爽と現れ、漂流民達をノーチラス号で陸地に送り返し、再び海に帰って活躍を続ける展開を想像していました。
そしてその後のヴェルヌの作品で、正義の主人公がピンチに陥ると現れて主人公を助けるという正義のヒーローのような存在。
ヴェルヌの作品は“ネモ船長シリーズ”であった!というような展開。
まあ私なんかが考えるのはろくなもんではない。
しかし、本作品でサイラス・スミス達を陰ながらネモ船長が助けていたということですが、全てが全部、説明がつくのでしょうか。
例えば、グラニット・ハウスのテーブルの上にマラリアの薬が置かれていたという件。ネモ船長が誰にも知らずに入ってきて薬を置き、誰にも知らずに帰っていくなんてことは可能なのでしょうか。
さらに、犬のトップが湖の中でジュゴンと戦った時。ネモ船長は偶然潜水服で湖の中に待機していたのでしょうか。
また、死が近いネモ船長が一人で航海したり電線を引いたりすることは可能なのでしょうか。
ネモ船長が行ったという手助けについてどう説明がつくか、一つ一つ検討するのも面白いかもしれません。(というか、もう既に誰かやっている?)
本作品の最後に、懐かしい名前が再登場しています。
「この開拓地に、サイラス・スミスとその仲間たちはなんども、グレナヴァン卿夫妻をむかえいれた。また、ジョン・マングルズ船長とその妻(ロバート・グラントの姉)や、ロバート・グラント自身、さらにはマクナブズ少佐などの訪問をうけたが、これらの人物はすべて、グラント船長とネモ船長の二つの物語にかかわりをもった人たちである。」
しかしこの中に、パガネル先生の名前がありません。ヴェルヌの分身ともいえる重要人物なのに、ヴェルヌは書き忘れたのでしょうか。
さらに、グラント船長(父)の名前も見えません。
それに、
「グラント船長とネモ船長の二つの物語にかかわりをもった人たち」
ということですが、実際にはグラント船長の物語の人たちばかりです。
ネモ船長の物語にかかわりのあるアロナックス博士、コンセイユ、ネッド・ランドはどうしたのでしょうか。
[wikipedia:神秘の島]
[wikipedia:SF巨大生物の島]
[wikipedia:海底二万里]
[wikipedia:ネモ船長]
[wikipedia:グラント船長の子供たち]
[wikipedia:ジュール・ヴェルヌ]
SF KidなWeblog
神秘の島〈第1部〉 (偕成社文庫)
http://sfkid.seesaa.net/article/453502704.html
神秘の島〈第2部〉 (偕成社文庫)
http://sfkid.seesaa.net/article/453717729.html
ミステリアス・アイランド 1 巨大生物の島
https://sfkid.seesaa.net/article/454500099.html
ミステリアス・アイランド 2 ノーチラス号の最後
https://sfkid.seesaa.net/article/454795071.html
少年少女・ネタバレsalono(ネタバレ注意!)
ヴェルヌ『神秘の島』ネタバレ感想会
https://sfklubo.blog.jp/archives/12884365.html
SF巨大生物の島 ネタバレ感想
https://sfklubo.blog.jp/archives/12884368.html
未来力養成教室 私には来なかった未来
http://sfkid.seesaa.net/article/451477090.html
20世紀少年少女SFクラブ
少年少女ベルヌ科学名作全集 難破船
http://sfclub.sakura.ne.jp/vkagaku08.html
SF KidなWeblog
ヴェルヌ『グラント船長の子供たち』(難破船)
http://sfkid.seesaa.net/article/453153819.html
逃げたい心 『神秘の島』
http://moocontinent.blog65.fc2.com/blog-entry-149.html
本漬け。~有名な本を読み漁れ!~ 神秘の島 第三部
http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-147.html
メランコリア 『神秘の島(上下巻)』 ジュール・ヴェルヌ著
http://blog.goo.ne.jp/ska-me-crazy2006/e/2583acb6501527d4e8e8a060e0959007
感想のナントカ [感想]神秘の島 (偕成社文庫)
http://kameana.blog64.fc2.com/blog-entry-919.html
『神秘の島』とジュール・ベルヌ。 山形浩生
http://cruel.org/cut/cut199907.html
月のひつじ 神秘の島 ~ネモの描き方~
http://d.hatena.ne.jp/yoshibey0219/20170612/p1
Something Orange 『神秘の島』。
http://d.hatena.ne.jp/kaien/20080403/p1
雪組公演 『CAPTAIN NEMO』 | 宝塚歌劇公式ホームページ
『CAPTAIN NEMO』
…ネモ船長と神秘の島…
~ジュール・ヴェルヌ「海底二万里」より~
脚本・演出/谷 正純
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/2017/captainnemo/index.html
■ノーチラス号とネモ船長
http://chikyu-to-umi.com/sf/nemo.htm
ジンギスカン(Dschinghis Khan)にあこがれて
Kaptain Nemo(キャプテン・ネモ)
http://www.yudouhu.net/dschin/dschinnemo.html
ブクログ
http://booklog.jp/item/1/4036513400
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読書メーター
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コメント
コメント一覧 (2)
巨大生物が登場するということで、むしろ同じ作品を原作とした映画『SF巨大生物の島』の方に似ています。
【ミステリアス・アイランド 1 巨大生物の島】
http://sfkid.seesaa.net/article/454500099.html
sfklubo
がしました
前編だけ見て後編を見ないと損です。
【ミステリアス・アイランド 2 ノーチラス号の最後】
http://sfkid.seesaa.net/article/454795071.html
sfklubo
がしました