HPにて『フランケンシュタイン』を取り上げました。

20世紀少年少女SFクラブ
【フランケンシュタイン】の主題による変奏曲
  https://sfklubo.net/frankenstein/
【フランケンシュタイン】の主題による変奏曲 その2
  https://sfklubo.net/frankenstein2/
 
 HPでは子ども向け縮約を読み比べたのですが、創元推理文庫の完訳版(森下弓子訳)も拾い読みしてみました。
 しかしモンスターは神出鬼没ですね。
 タイミング良く探している人の前に現れています。
 ヴィクターの弟・ウイリアムにしろジュスティーヌにしろヘンリー・クラーヴァルにしろ、何でこうもうまく見つけることができたのでしょうか。
 エリザベスの寝室にも忍び込んでいるし、北極探検船の死体安置所にも入り込んでいます。
 しかもあまり目立たずに極秘裏に行動しています。
 モンスターにはストーカーとしての才能があるのでしょうか。それをうまく利用すれば忍者や名探偵になれるかもしれません。
 
 本作品をモンスターを犯人と見立てた犯人捜索のミステリーとして読むとどうでしょうか。
 ウイリアム少年殺人事件において、ウイリアムの首に犯人の手の跡が見つかったという記述があります。
 その手の跡はジュスティーヌの手と一致するのでしょうか。
 ジュスティーヌの証言ももっと検証してほしいところです。
 ジュスティーヌは叔母の家からの帰り道に男に迷子の子を見かけなかったかと聞かれて探したと訳されていますが、その迷子の子とはウイリアムのことでしょうか、それとも別件のことでしょうか。ジュスティーヌは迷子をウイリアムだと思っていたのでしょうか。そこがこの森下訳ではよく分かりません。だから子ども向け翻訳でも、この部分は色々と訳されています。
 裁判ではジュスティーヌに迷子のことを教えた男の証言も検証してほしかったところです。
 ここら辺、ミステリー小説だと問題になるところです。
 
 ところでモンスターは、研究室を出る時、寒いのでヴィクターの外套を拝借して行ったということです。
 しかしモンスターは巨人サイズだから、通常サイズのヴィクターの外套を着られるのでしょうか。
 そしてモンスターは外套のポケットに入っていた日記帳を読んで自分の出自やヴィクターの故郷を知ったということです。
 ヴィクターは何で日記帳を外套のポケットに入れていたのでしょうか。普通は日記帳はポケットなんかに入れず、机の中にしまっておくものなのですが。
 
 ところでモンスターは顔が不気味だからという理由で迫害されています。
 それなら顔を美形に整形すればどうだったのでしょうか。
 当時は美容整形術が未発達だったのでしょうか。
  
 ロバート・ウォルトンも不思議な存在です。
 ウォルトンは毎日のように姉に当てて手紙を書いています。
 この手紙はどうやって送られているのでしょうか。
 毎日郵便船が出ているのでしょうか。
 これは書かれた手紙ではなく、電信で送信された手紙ということなのでしょうか。
 
 それにしても、モンスターはあまりにも神出鬼没に都合よく出現しています。しかも目撃情報は極端に少ない。
 これはもしかして、最初から最後まで、精神がおかしくなったフランケンシュタイン青年の妄想だった、ということはないのでしょうか。
 とはいえ、ウォルトンや北極探検船の船員もモンスターを見ています。
 ということは、実は全てが北極探検に出て精神がおかしくなったウォルトンの妄想であって、モンスターもフランケンシュタインも全部ウォルトンの作り話だったとか。
 文学的に鑑賞するとウォルトンーフランケンシュタインーモンスターには対称性があり、枠構造という叙述の方法は不思議な話を語るために効果のある方法だということです。
 確かにこんな風に枠構造にしてしまうと、色々な解釈の余地が現れますね。


 ウォルトンは北極点探検を目指しましたが、現実に人類が北極点に到達するのは本書の出版から100年近く後のことだったようです。
 北極点到達はなかなか大変な冒険だったんですね。
 19世紀初頭に北極点冒険を作品に取り入れたメアリ・シェリーは着眼点が鋭い。
 
1818年 『フランケンシュタイン』出版
1909年 ピアリーが北極点到達
1911年 アムンセンが南極点到達
 
  [wikipedia:北極点]
  [wikipedia:ロバート・ピアリー]
  [wikipedia:ロアール・アムンセン]
 
 モンスターは『失楽園』『プルターク英雄伝』『若きウェルテルの悩み』を読んで言語(フランス語)を独習したようです。
 こんな本、読めますか?インテリですね。モンスターに負けないようにいつかは読まなあきませんね。蛇足ながら『失楽園』はジョン・ミルトンの描いた文学作品の方ですよ。渡辺淳一の方ではありませんよ。

 なお、創元推理文庫版には新藤純子さんの詳しい解説が収録されています。
 文学作品の読解とはこんな風にするのかと勉強になりました。しかし、難しい。一文が長い、つまり句点から句点までが長いです。

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1)) 
  https://booklog.jp/item/1/B007TAKKHW 
  https://bookmeter.com/books/5593287
 

 一方、角川文庫(山本政喜訳版)の1994年の改版初版は、映画に合わせて改版になったのでしょうか。映画のシーンが表紙と見返しに掲載されています。この改版初版には風間賢二さんの解説が収録されています。こちらは一文が短くて読みやすい。読みやすい割には内容もしっかりとしていると思います。
 それはともかく、解説を読むことで読者の知識も増え、文学作品の解釈の勉強になります。出版社の皆様には今後も解説を充実させてくださるようお願いします。

フランケンシュタイン (角川文庫)
  https://booklog.jp/item/1/4042710018
  https://bookmeter.com/books/4142

  [wikipedia:山本政喜]
  [wikipedia:風間賢二]
 
風間賢二Twitter  https://twitter.com/k_kazama
 


 国書刊行会のゴシック選書から臼田昭訳版が出ています。
 1931年の原書第三版を底本として訳されているようですが、1818年の初版との違いが14ページに渡って列記されています。
 また、メアリ・シェリーの短編『変身』『寿限有の寿限無』も収録されています。
 これらは返却期限が迫って読めなかったのですが、『寿限有の寿限無』とはセンスのいいタイトルですね。
 巻末の臼田さんによる解説も読みやすい文章で有意義です。
  
フランケンシュタイン (ゴシック叢書〈6〉)
  https://booklog.jp/item/1/B000J8JOGY 
  https://bookmeter.com/books/94052
 
  [wikipedia:臼田昭]


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