空中紳士―合作探偵小説 (春陽文庫)
耽綺社同人
春陽堂書店
1994-07T



 探偵役は有能な女性記者・星野龍子。暗躍する謎の紳士・響晰(ひびきあきら)の正体は何か?!
 事件に次ぐ事件・謎に次ぐ謎の連続でジェットコースターに乗ってるようなノンストップエンタメ冒険小説。
 東欧のR国皇太子・ルール殿下が母国の政変のため友人だった元R国公使・巽小路侯爵のもとへお忍びでかくまわれている……という設定です。この巽小路侯爵とはいい人なんかと思ったらこれがとんだ一杯食わせ者で、美女と言えば見境なく言い寄るド助平だった!その奥方は園部男爵と不倫しているし、園部男爵はルール殿下の政敵・ピラテーヌ卿とつながっているし、もうモラル不在の魑魅魍魎です。これで事件が起こらないはずがない!ルール殿下もまずい場所に逃げてきたものです。
 で、星野記者の活躍も今一歩及ばずといったところ、現れたのは……?真の探偵とも言える真打ちが登場します。こういう二段構えの展開が面白い。
 まあ現実にはあり得ないトリックもあるし、ご都合主義な展開もありますが、一応筋は通っているしエンタメとしては面白いのではないでしょうか。
 私は小学生の頃子ども向け翻訳で読んだ『海からきたなぞ(フレンチ警部とチェインの謎)』が好きでした。
 子ども時代の私には自分が名探偵になって事件を解決できるだろうという自信が持てませんでした。だから私が探偵をしてもいい所までは行くが完全に解決することはできないだろう、だから最後には本当の名探偵に助けてもらわないといけない、という意識があったのだと思います。それで、一人目のあと一つ足りない探偵役を自分だと思って応援していたのだと思います。何と自信のない心理か!?まあ実際その通りで、その後の人生も主役になることはなく脇役ですらない泡沫の役を演じてきましたが。
 長じてから読んだ『赤毛のレドメイン家』も二人目の探偵が解決します。
 こういう一人目の探偵役が苦しんだ後に真打ちが登場して解決するタイプのミステリーは他にもあるでしょうか。


OLDIES 三丁目のブログ
 マギル卿さいごの旅 チェーンの秘密
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/20171116/p1
 二人の探偵が登場 赤毛のレドメイン家 フィルポッツ
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/20170313/p1


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銀のマント
 江戸川乱歩の珍しい合作小説「空中紳士」
  https://ameblo.jp/isa2000/entry-11275997988.html

ロック探偵のMY GENERATION
 江戸川乱歩、土師清二、長谷川伸、小酒井不木、国枝史郎『空中紳士』
  https://blog.goo.ne.jp/murakaminobu/e/050520ed3b6f3f2249e6f13c841b5749

Les jardins suspendus de Babylone
 空中紳士
  https://baby-alone.hatenablog.com/entry/20080822/p1

復刊ドットコム『合作探偵小説(耽綺社(江戸川乱歩 ほか))』 投票ページ
   https://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=35456

OLDIES 三丁目のブログ
■黄金仮面 江戸川乱歩の最高傑作
  https://diletanto.hateblo.jp/entry/20141030/p1

本作品は『黄金仮面』に似たテイストを感じます。つまり、私好みです。
 
少年少女・ネタバレsalono(ネタバレ注意!)
 コスプレ探偵・畔柳博士@江戸川乱歩『蜘蛛男』(ネタバレ注意!)
  https://sfklubo.blog.jp/archives/12884382.html
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こういう畔柳友助博士パターンも好きです。
 

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