ロボット (角川文庫)
矢野 徹
KADOKAWA
2016-02-25



 以前HPで矢野徹さんの『孤島ひとりぼっち』を読んだことありました。
 
~20世紀少年少女SFクラブ~
ロボットFの献身
【孤島ひとりぼっち】矢野徹
  https://sfklubo.net/nur_sola_sur_la_insulo/
https://sfkid.seesaa.net/article/495166314.html
 
 その際、この作品を映画化を前提として長く書き直した作品があると知りました。それがこの『ロボット』です。早速読んでみました。
 オリジナルは日本人が登場しますが今回の主人公はジョウ少年で、アメリカ社会が舞台です。ジョウ少年のガールフレンドは日系人で、日本の話題も登場します。
 人工頭脳搭載の組み立て式ロボットが売り出されている未来社会で船が沈没したり行方不明になって救助が来なかったりする理由がしっかりと描かれていました。
 積み荷のロボットを狙って国際的陰謀組織が仕組んだ工作であり、乗組員の間に協力者がいるらしいという生々しい設定に。
 オリジナル版では順少年は無人島でのサバイバルだけに専念していたのですが、今回の作品では生存者の中に裏切り者がいるかもしれないという内憂外患状態です。
 オリジナル版と読み比べると、物語のふくらませ方の勉強になります。
 本作品では船を沈没させた国際陰謀団との対決が加わっているのですが、この部分の状況説明については断片的に書かれているのを自分の頭で構築していかないといけません。名探偵が「今回の事件の真相は……」と説明してくれているわけではないのです。
 しかし、市販される予定のロボットを得るためにわざわざ貿易船を沈没させる工作をするのは大掛かり過ぎではないか、売買の前後で盗む方が効率的ではないかという気もします。
 また、船の生存者の中で一番頼りになりそうだった通信士エド・サリバンさんの死因は何だったのでしょうか?完全な密室殺人でしたが、結局謎解きはありませんでした。
 私が図書館で借りたのは再版で、表紙に女性型アンドロイドが描かれています(生頼範義・画)。




 それで女性型アンドロイドが登場するのかと思えば、そうではありませんでした。ロボットに男も女もないでしょうが、強いて言えば男のような話し方をする、オリジナル版のフライデーと同じロボットでした。(本文に挿絵はありません)
 ちょっと本文の内容と違うイメージの表紙なんです。
 まあ本文中でジョウ少年は色々な妄想を見るのですが、その妄想を一まとめにして女性型アンドロイドにしたイメージ画像、と思えばいいのでしょうか。
 感動的なラストシーンはオリジナル通りです。しかしロボットが行方不明になることはあり得るのでしょうか。フライデーにはテレポーテーション能力があったのでしょうか?
「あとがき」で矢野さんが本作品成立のいきさつについて語ってくれています。
 本作品が映画化されていたらどんな映画になっていたでしょうか?
 そして主人公の祖父のモデルは御大ハインラインだという。
 本作品が好評だったら少年少女を主人公とする話を書いていきたい、とも書かれています。
 もはや矢野さんは鬼籍に入っておられこの記述は過去のものとなっていますが、そうであったと思いたいですね。(2023.01.26)


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 矢野徹「ロボット」
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