深草丘十郎は父親を土佐の庄内半蔵に殺害され、仇討ちのために新選組に入隊します。
　父が斬られた時、丘十郎も一緒にいたのですが、さすがに庄内達は丘十郎は斬りませんでした。子どもだから見逃したのでしょうか。もしこの時、子どもだと油断せずに殺害していたらその後の話はなかったのです。
　武士の時代、仇討ちというのが繰り返されました。本作品でも仇討ちの繰り返しの無常がテーマになっています。一族皆殺しは仇討ちを防ぐための行為でもあるのですね。

　丘十郎と同日入門で親友となった鎌切大作は天才肌の使い手です。ものすごい髪型をしていますが、一体どうやってこの形をキープしているのでしょうか。丘十郎の髪の毛も物語進行につれてどんどん長く増えていきます。

　1963年の「少年ブック」1月号～10月号に連載した作品とのこと。当時は新選組はあまりメジャーな存在ではなかったとのこと。しかし博学の手塚治虫先生、名前だけの登場も加えれば多数の新選組メンバーが登場します。近藤勇が人格の優れた頼れる局長として描かれています。沖田総司は一般隊士に近い兄貴分として、丘十郎に剣の道を教えます。土方歳三の登場回数は少ない。土方は桝屋喜右衛門を拷問して丘十郎に批判されています。芹沢鴨閥の取り巻きも何人か登場しますが、名前がでるのは平山だけです。しかも姓だけで、名前（五郎）は記されていません。また、新見錦や山南敬助は登場しません。本編の深草丘十郎やその親友の鎌切大作は架空の人物です。ドリフターズの『飛べ！孫悟空』の影響で三蔵法師一行のメンバー数は５人だと思っている方がいるようですが、本作品の影響で、「新選組といえば深草丘十郎や鎌切大作！」と思う方もいるのではないでしょうか。

　丘十郎は芹沢鴨に命じられて長州の間者となっていた４人の隊士への討ち入りを手伝います。
　その時、逃げて来た松永主計にとどめを刺さず、逃がしたために松永の娘・八重から親の仇として狙われます。
　この松永主計、芹沢・斎藤・永倉・藤堂らの討ち入りから逃れて逃走するのだから、意外と腕は立つ実力者かもしれません。しかも仏南無之介という凄腕の友人も持っています。一体どんな人物だったのでしょうか？しかしダイイングメッセージとして丘十郎を仇として伝えたのは情けないというか八つ当たりというか。お前が逃げるためにだまし討ちしようとして失敗した相手やろ！元はといえばお前が新選組を裏切ったんが悪いんやろ！　

　　　松永主計　https://dic.pixiv.net/a/%E6%9D%BE%E6%B0%B8%E4%B8%BB%E8%A8%88

　そして仏南無之介の登場です。普段は白目なのにここぞという時に眼が描かれます。剣に曇りがない清廉潔白の剣士として描かれています。なかなかいいキャラなのですが、他の作品に登場するのでしょうか？

　丘十郎が庄内半蔵を斬った後、今度は丘十郎が土佐藩の連中から仇として狙われます。
　この土佐の連中のボスとして恰幅のいい左眼帯の男が登場します。この男、「先生」と呼ばれていますが、名前は登場しませんでした。

　新選組にも反幕府勢力の間者が多く紛れ込んでいたようで、発覚すれば芹沢鴨は公開処刑しようとしたり夜中に討ち入りしたりしていました。
　しかし鎌切大作に対しては、深草丘十郎にタイマンでの処刑を命じました。普通なら大勢で確実に殺しに行くところです。しかし親友との決着でけりをつけようとしたのは、近藤勇体制の温情ということでしょうか。（マンガにする上での効果的な展開ということなのでしょうか。）

　丘十郎との決闘に対して鎌切大作は手加減していたのか、という問題は見解が分かれるでしょう。
　私は鎌切大作は意識の上では真剣勝負だったと思います。ただ、無意識の上では本気になり切れない部分があったのかもしれません。
「よくやった丘ちゃん」
というセリフは、意識の上で手加減していたら出ないと思います。やはり意識の上で本気で勝敗をつけようとしていたから出た称賛の声だと思います。

　手塚治虫漫画全集版の「あとがき」で手塚先生は「本当は五稜郭まで描きたかった」と書かれています。幻の続編。もし実現していたらどんな作品になっていたでしょうか。コミックトムなら描けたのでは？みなもと太郎さんの『風雲児たち』と時代がかぶるから避けたのでしょうか。

　本作品、2022年8月に歌舞伎化されたようです。これは素晴らしい企画だ。むしろそれまでに映像化・演劇化されていなかったことがおかしいのです。

　ところで本作品で桂小五郎を演じているのは力有武さん。力さんは内山彦次郎も演じていたし、冒頭で土佐藩士に追われる侍も演じたし、他にもモブシーンで登場していたような……。とり・みきさんなら「低予算マンガは辛いよ」とギャグにしそうです（例・納豆の光）。
　一人二役といえば、長州の間者の四人のうち一人が丘十郎の父に似ています。

力有武：TezukaOsamu.net(JP) 手塚治虫 公式サイト
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幕末を舞台に若者の友情と葛藤を描く
『新選組』手塚治虫
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幕末レビュー
　手塚治虫名作集１１　新選組
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戦前生まれの刀剣漫画家・刀剣漫画原作者
手塚治虫 - 刀剣ワールド
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手塚治虫原作『新選組』、8月歌舞伎座で上演決定
　　https://www.kabuki-bito.jp/news/7569

手塚漫画 初の歌舞伎化「新選組」　「芝翫3兄弟」で挑む
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手塚治虫『新選組』で主役デビュー
歌舞伎界の“令和の志士”
中村歌之助に注目！
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[wikipedia:壬生浪士]
[wikipedia:新選組]

NHK大河ドラマ『新選組！』感想
　　https://diletanto.hateblo.jp/entry/20041115/p1


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